1989年,小学校指導書社会編


第2章,社会科の目標および内容 第1節,社会科の目標 1,教科の目標 ……(前略:飯國)……  小学校の社会科の教科の目標は、二つの部部から構成されている。一つは、「社会生活についての理解を図 り、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て、」という部分である。もう一つは「国際社会に生きる民 主的・平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。」という部分である。  前者は、小学校の社会科のねらいの特色を示している。これは、「社会生活についての理解を図り、」とい う部分と「我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て、」の部分に分けることができる。社会生活につい ての理解は、社会生活の総合的な理解を図ることをねらいとしており、我が国の国土と歴史についての学習も その中に含まれる。しかし、我が国の国土と歴史についての理解と愛情を育てることは、社会生活についての 理解を図る上で特に重要であるので、その強調点として示しているものである。後者は、小学校及び中学校の 社会科の共通のねらいであり、小学校及び中学校の社会科における指導を通して達成させる究極的なねらいを 示している。  このように、小学校の社会科は、社会生活についての総合的な理解を図ることを通して、「公民的資質の基 礎を養う。」ことを究極のねらいとしている。 以下、目標の要素について取り上げることとする。 (1),社会生活についての理解  社会生活についての理解は、社会科の発足以来、この教科の目標として位置付けられてきたのものであり、 主として、人々が相互にさまざまな関わりをもって生活していることを理解させ、社会生活に適応するととも に、その発展に貢献しようとする態度の育成をめざすものである。  個々では、社会生活は、身近な地域における自然環境や人々の生活及び組織的な諸活動の様子などとともに、 広く国土における自然環境や人々の生活、産業等の様子及び我が国における人々の生活の歴史的背景などを含 んだものであり、小学校の社会科は4年間を通して、社会生活についての総合的な理解を図るものである。 (2),我が国の国土と歴史に対する理解と愛情  我が国の国土と歴史に対する理解と愛情は、身近な地域や我が国の国土の様子及び先人の働きなどについて の指導を通して育てられる。  我が国の国土に対する理解と愛情については、身近な地域の様子や県(都、道、府)についての指導をふま え、自然条件から見て国内の特色ある地域や我が国の地理的環境の様子などを理解させ、我が国の国土に対す る愛情を育てることをねらいとしている。  同様に、我が国の歴史に対する理解と愛情についても、市(区、町、村)を中心とした地域の人々の生活の 移り変わりや地域の文化や発展に尽くした先人の働きなどの指導をふまえ、我が国の歴史にかかわる理解を深 めさせ、我が国の歴史に対する愛情を育てることをねらいとしている。  以上のように、我が国の歴史に対する理解と愛情を育てることにより、社会生活についての理解を一層深め ていくことができるのである。 (3),公民的資質の基礎  すでに述べたように、社会科は、広い視野から社会生活についての理解を図り、それを通して公民的資質の 基礎を養うことは、社会科の究極的なねらいである。  公民的資質は、民主的、平和的な国家・社会の形成者すなわち市民・国民として行動する上で必要とされる 資質を意味しており、とりわけ、これからの国際社会に生きる日本人としての資質が求められている。小学校 の社会科ではその基盤を養うことを目指している。,公民的資質の基礎を養うためには、単なる知識の伝授で はなく、児童一人一人が社会生活についての理解をもとに社会的なものの見方や考え方をもち、これからの社 会において主体的に生きていくことができる力を育てるようにする必要がある。また、民主的、平和的な国家 ・社会の一員として自他の人格を尊重するとともに、社会的義務や責任を果たそうとする態度を培うようにす る必要がある。  さらに、市民・国民として行動するには、社会生活のさまざまな場面で適切に判断することが大切である。 したがって、社会科において、社会的事象を公正に判断できるようにすることは大切である。そのためには、 社会的事象を一面的にとらえるのではなく、さまざまな角度から総合的に理解させるようにする必要がある。 その際、多角的、総合的に扱うことがいたずらに学習負担の増大につながらないよう、指導内容を精選するこ とが大切である。

1989年,小学校指導書生活編

第1章,生活科の新設 第2節,生活科新設の趣旨とねらい  小学校低学年に、なぜ生活科を新設するのか。その背景は、上述の経緯によって理解できるところである。 個々では、生活科新設の趣旨とねらいについて、より具体的に述べることにする。教育課程審議会の答申は、 その趣旨とねらいを、次の4項目に集約している。,その一つは、「低学年児童には具体的な活動を通して思 考するという発達上の特徴がみられるので、直接体験を重視した学習活動を展開し、意欲的に学習や生活をさ せるようにする。」ということである。  低学年の児童の心身の発達は、幼稚園の年長児から小学校中・高学年の児童への過渡的な段階であり、具体 的な活動を通して思考するという発達上の特徴がみられる。そこで、幼稚園教育との関連も考慮して、低学年 では直接体験を重視した学習活動を展開することが、教育上有効であると考えられる。すなわち、直接体験を 重視することによって、児童は学ぶことの楽しさや成就感を体得することができるのである。そして、そこで 学習したことを次の学習に生かしたり、児童自身の生活に生かしたりしようとする意欲や態度などの育成を目 指しているのである。  その二つは、「児童を取り巻く社会環境や自然環境を、自らもそれらを構成するものとして一体的にとらえ、 また、そこに生活するという立場から、それらに関心をもち、自分自身や自分の生活について考えさせるよう にする。」ということである。  従前の社会科や理科の学習においては、身近な社会や自然を観察の対象としてとらえがちであったのに対し、 生活科では児童自らが環境の構成者であり、また、そこにおける生活者であるという立場からそれらに関心を もつところにその特徴がある。生活科は、児童が身近な社会や自然に知的好奇心をもち、問題解決的な能力や 態度を育てるようにするとともに、具体的な活動や体験において、自分も社会や自然の構成員であり、自分と 社会や自然とのかかわりについて、自ら納得して分かるようになることが大切なのである。  また、生活科では、自分自身や自分の生活について考えることを求めている。身近な社会や自然とのかかわ りの学習や自分自身への気付きなどの学習を通して、自分の役割や行動の仕方について考え、自分の判断で行 動できるようになることを目指しているのである。,その三つは、「社会、自然及び自分自身にかかわる学習 の過程において、生活上必要な習慣や技能を身に付けさせるようにする。」ということである。  生活科では、児童が生活者としての立場から、家庭生活や学校生活、また、社会生活において必要な習慣や 技能を身に付け、それを生活のなかに生かすことができるようになることを目指している。ただ、生活科にあ って習慣や技能の育成は、それだけを単独に取り上げて指導するのではない。児童が意欲的に取り組んでいる 社会、自然及び自分自身にかかわる学習活動の過程において、必要に応じ、適切な機会をとらえて指導するの である。その四つは、上記の三つの事柄は、「学習や生活の基礎的な能力や態度の育成を目指すものであり、 それらをと通じて自立への基礎を養うこととする。」ということである。,生活科は、あれこれの事柄を覚え ればよい教科ではない。具体的な活動や体験を通して、よき生活者として求められる能力や態度を育てること であり、つまるところ自立への基礎を養うことを目指しているのである。 第2章,生活科の目標 第1節,教科目標 ……(前略:飯國)……  此の教科目標には、生活科が求める四つの視点が示され、その究極的なねらいが掲げられてある。すなわち、 四つの視点とは、 (1),具体的な活動や体験を通すこと (2),自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をもつこと (3),自分自身や自分の生活について考えること (4),生活上必要な習慣や技能を身に付けること  である。そして、これらの視点をおさえることによって、「自立への基礎を養う」という究極的な目標を達 成するとしているのである。  以下、上記のような構成になっている生活科の教科目標について、その趣旨を順を追って述べることにする。 第1は、「具体的な活動や体験を通す」ということである。具体的な活動や体験とは、例えば、見る、調べる、 作る、探す、育てる、遊ぶなどの学習活動であり、また、それらの活動の様子や自分の考えなどを言葉、絵、 動作、劇化などによって表現する学習活動である。このことは、生活科害すに座って、頭だけで教科内容の理 解を目指すのではなく、直接体験を重視した多様な学習活動を展開し児童の積極的な探求心をはぐくみ、自立 への基礎を養う豊かな体験の世界を広げ、深めていくことを目指しているのである。  第2は、「自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をもつ」ということである。生活科は児童の生活圏 である学校、過程、地域が学習の場となる。児童がそれらの身近な社会(人々、もの)や自然と自分とのかか わりに関心をもつということは、児童を取り巻く社会や自然を対象化して、客観的にとらえることが中心にな るのではなく、それらが自分自身にとってもつ意味に気付き、身の回りにあるものをもう一度見直し、自分な りの切実な問題意識をもって、調べたり、考えたり、表現したりなどすることである。  生活科においては、社会的事象や自然の事物・現象のあれこれを客観的にとらえることが主たるねらいでは なく、生活者として社会や自然にどのようにかかわるかを重視している。例えば、社会とのかかわりでは、学 校や過程の様子などがただ分かればよいということではなく、自分もその中で生活するものとして、学校や家 庭でよりよく生活できるようになることが目指されるのである。また、自然とのかかわりでは、飼育、栽培は 動植物の成長や変化の様子が分かることに主たるねらいがあるのではなく、それらを大切にしたり、愛情をも って育てたりすることが求められるのである。このような主体的なかかわりは自立への基礎を養う上で大切で ある。  第3は、「自分自身や自分の生活について考える」ということである。自分自身や自分の生活について考え るということは、自分自身のことや自分の生活について調べ、考え、新たな気付きをするということである。 それによって児童が自分自身についてのイメージを深め、自分の良さに気付き、心身ともに、健康でたくまし い自己を形成することは、自立への基礎を養う上で大切である。  生活科においては、こうした自分自身への気付きが大切にされるが、小学校低学年の児童にとって、自分自 身への気付きとは具体的にどういうことであろうか、主なものとして次のようなものが挙げられる。  その一つは、集団生活になじみ、集団の中の自分の在り方に気付くことである。みんなと一緒に遊び、学習 することを通して仲間意識や帰属意識を育て、共に生活できるようになることである。また、これは集団の中 の自分の在り方に気付くだけでなく、自分と友達の違いに気付くことも大切である。  その二つは、自分の成長に気付くことである。誕生から現在までの自分の成長や生活環境などの変化に気付 くことである。そして、このような自分の成長の背後には、家族や幼稚園の先生、友達など多くの人々がいる ことが分かり、それらの人々に感謝の気持ちをもつようになることである。  その三つは、自分ができるようになったことや得意としていること、また、興味・関心をもっていることな どに気付くことである。例えば、漢字が書けるようになったことや徒競走が速いことなど、自分の良いところ や取り柄に少しでも気付くことである。  第4は、「生活上必要な習慣や技能を身に付ける」ということである。生活上必要な習慣とは、健康や安全 にかかわること、礼儀作法などにかかわることであり、生活上必要な技能とは、手や体などを使って道具を上 手に使うことなどである。具体的には、例えば、次のようなことが挙げられる。 ・安全に気を付けて、登下校ができる。 ・手や体を上手に使い、友達と協力して活動や体験ができる。 ・日常生活における整理・整とんや、遊びや活動に必要な用具などの準備や後始末がで,きる。 ・あいさつや話し合い、きまりなど日常生活に必要なことを大切にして仲よく生活する,ことができる。 ・相手に気を配って接したり、扱ったりすることができる。  なおこれらの習慣や技能を身に付けさせるに当たって大切なことは、上記第2、第3の学習活動の過程で、 生活上必要な習慣や技能を育てる適当な活動が伴うので、その機会をとらえて指導するということであり、そ れらの習慣や技能を単独に取り上げて指導するということではない。これが「その過程において……身に付け させ」るということである。第5は、生活科の究極的な目標である「自立への基礎を養う」ということである。 ここで目指している「自立」とは、単なる生活習慣上の自立にとどまるものではなく、学習上の自立であり、 精神的な自立である。そうした自立のためにこそ、豊かな体験をもつこと、自分とのかかわりで学習すること、 自分自身についての理解を深めることが特に重要な意味をもつのである。  児童が将来度のような形で自立してほしいのか、その基礎として小学校低学年では何をどのように身に付け、 内面化していかなくてはならないかなどについて具体的検討が必要であるが、そのいくつかを挙げてみたい。  その一つは、学校という集団生活にはいった初期の段階において、学級や学校という集団や社会の一員とし て、集団生活ができるようになるということである。児童が仲間意識や帰属意識をもち、共に遊び、共に学ん で、よりよい生活ができるようになることである。その二つは、自分のことは自分でできるようになることで ある。例えば、健康や安全、整理・整とん、あいさつなど、日常生活に必要な習慣を身に付け、また、手や道 具を上手に使って遊びや生活に必要な簡単なものを作り、それで遊ぶなど、日常生活に必要な技能を身に付け ることである。  その三つは、学習活動や集団生活において、自分の考えや意見がはっきりと述べられることである。また、 自分の意志を人に伝えることができるとともに、人の話を聞くことができることである。自己を表出できると ともに他を受容するということは、社会生活を営む上で欠くことのできない重要なことである。  その四つは、身近な社会や自然の事柄に関心をもち、生きる主体として環境に積極的に働きかけることがで きることである。これは身近な社会や自然への目を広げることであり、その中でいろいろな事象や事物・現象 への気付きを深めるということである。